令和6年能登半島地震被災建造物復旧支援事業(文化財ドクター派遣事業)
慶願寺初見 山崎幹泰(金沢工業大学)
慶願寺は、輪島市町野町金蔵オ-123に位置する浄土真宗寺院(真宗大谷派)である。もと は真言宗で西の坊と称したが、文明5年(1473)慶順が蓮如に帰依し改宗、永禄年中(1558 ~70)西了の代に寺号を許されたとされる。
本堂は、正面9間側面9間半、入母屋造平入り桟瓦葺き、正面一間向拝付き、東面。建築 年代は、棟札により文政4年(1821)上棟、大工棟梁は清水龍蔵利長と判明する。大正2年 (1913)撮影の古写真では、本堂は切妻造妻入板葺屋根(一部瓦葺き)であることが確認で きる。その後、本堂屋根を現状の瓦葺に改め、飛燕の間を拡張しており、その時期は内陣の 壁下地に残る古新聞から、昭和9年(1934)頃と考えられる。
本堂平面は、典型的な浄土真宗本堂の間取りである。正側三方に落縁を回し、手前から奥 行き三間を外陣、一間を矢来内、三間半を内陣、二間を後堂とする。床高は、外陣より矢来 内を一段上げる。内陣は後門形式。
間口方向は、外陣にて中央間三間、脇間各一間、入側間各一間とし、矢来内と内陣では、 入側間(飛燕の間)が二間になる。入側間と縁側、飛燕の間は昭和の増築部分である。後堂 も奥行きを一間から二間にしたと思われる。
柱は内外陣とも円柱の立て登せ柱、内陣背面通りと、矢来内より後方の側柱、および向拝 柱を角柱とする。外陣は外陣・矢来内境、中央間・脇間境に虹梁を渡す。中備えは外陣・矢 来内境では出三斗組、中央間・脇間境では蟇股、通し肘木の上に間斗束。内外陣境では、各 間に透彫彫刻欄間を入れ、各間に虹梁、台輪の上に二手先組物尾垂木拳鼻付き、中備えは蟇 股、支輪付き。内陣の軸部は漆塗りで柱は金箔押し。組物は出三斗拳鼻付き。天井は外陣、 矢来内、内陣とも小組格天井。
正面は各間に桟唐戸、側面は舞良戸を入れ、柱頂部に虹梁、台輪、組物は出三斗拳鼻付き、 軒は二軒繁垂木。妻飾は、南面の妻壁には大虹梁の上に立体的な龍の彫刻(市指定)を据 えるが、北面は大虹梁のみとする。
向拝は水引虹梁をかけ、持ち送りは竜頭、木鼻は象鼻、組物中備えとも出三斗手挟付き、 身舎との間に蝦虹梁をかける。木階は四段。縁には擬宝珠高欄を付ける。
建築年代が明確で、屋根の葺き替えに伴い側周りの拡張したことも分かり、彫刻装飾も豊 富で、建築年代の指標となる点で貴重である。
被害状況調査結果
被害状況
軸部の傾斜と壁、建具の破損
修理方針
柱の建て起こしと壁、建具の復旧
修理概要
本堂は内部床‧壁を部分撤去を⾏い、部分ジャッキアップを⾏う。
外壁の漆喰は復旧する、内壁は浮き部、剥落部の仕上塗りを撤去し、上塗り補修を⾏う。
天井‧鴨居等落下部材の復旧を⾏う。
乾式⼯法の壁剥離箇所は新設 PB 張の上、上塗り補修を⾏う。
破損建具は既存枠利⽤可能なものは再利⽤し補修及び復元新調し、建込み調整を⾏う。
⼤屋根の損傷は軽微とし積算から除外